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企業を成長に導くM&A戦略における資金調達術、M&Aの成功と失敗の分かれ目とは

この記事は後編です。前編をまだお読みになっていない方はぜひ前編もご覧ください。

■ テーマ3:プロセスの推進とCFOとしてのリーダーシップ

金坂:悩んでいる方も多いと思われるテーマです。今日参加されている皆様の中には上場していて、IRもやって財務もやって経理まで見つつ、なんだったらM&Aもして良い案件見つけてきて、PMIをして企業価値を高めてください、とCEOに言われて「無理じゃないか?」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか(笑)

一方で、ここで話をしている皆様はCFOとして行動して、リーダーシップを取られていると思います。CFOという立場でプロセス全体をどうやって推進しているのか、リーダーシップをどう分担しているかをお聞きしたいです。特に3点目ですね。過去にうまくいかなかったこともお聞きできればと思います。渡邊さんからお願いします。

渡邊:基本はCFOとCSOで分担しています。CSOのがM&Aのエグゼキューションをやっていきます。私はどちらかというと、バリュエーション目線とファイナンスをつけていくという感じですね。GENDA自体にお金があるわけではなくて、毎回全部ファイナンスをつけているという状況です。エグゼキューション自体には私はCFOとしては関わりません。上場企業がTOBの時だけは経験が活かせるのでやっています。

最後の質問の反発に関しては、こういったものは結局やらなかった場合がほとんどだと思っています。一方でやるとなる時は、従業員も含めて全体の25%ぐらいを社員で株式として持っているので。そのエクイティバリュー分が増えるということで目標統一ができています。すごくインセンティバイズされていて、みんなで頑張ってやれるわけです。多少エグゼキューションで混雑していても、そこをやりきれるようなインセンティブ設計になっている感じです。

金坂:河原さん、お願いします。

河原:当社も似ていまして、私はプロセス全体には関わるものの主に資金調達やIR関連をメインで担当するケースが多いです。エグゼキューションについては今、Corporate Development室長というM&Aのヘッドがメインで担当しています。あとは案件を推進する事業責任者と、特に3人でよく話しながら動いて社内のオーソライズをとっていくことが多いです。

反発みたいなところまでいったケースはありませんが、PMIに慣れていなかった時代は、いつ・どこまで統合するかという点で社内でコンセンサスができていないこともありました。これについては型化を含めて改善していっています。

金坂:小島さん、お願いします。

小島:プロセスに関しては、我々の部でM&Aのソーシングからエグゼキューション、PMIへの掛け渡し、最近は一部PMIのバリューアップもやっています。その意味では一連の全てのところを担っています。3つのチームに分けていて、戦略企画室というところで、ブランディングを含めて、M&Aのソーシングをやっています。エグゼキューションになると、M&A推進室というところで担当していきます。最近は海外事業推進室で海外事業も見ています。

SHIFTはもう一個、M&A専門のSHIFTグロース・キャピタルというグループ会社を持っていて、私も取締役を務めています。SHIFT本体は毎月の取締役会で案件の決議をしています。月一でも充分頻度は高いと思うのですが、もう少しフレキシブルに対応するためです。SESである程度の型化ができていて一定のバリュエーション以下であれば、それほど意思決定に時間をかけなくてもいいと考え、一部を権限移譲して、SHIFTグロース・キャピタルで決めてもいいとしています。SHIFTの取締役会で決議をしなくてもある程度はオーソライズされています。

反発に関しては、それぞれの立場の話だと思います。我々はどちらかというと推進する側としてどんどんやりたいと言っています。一方で、管理やコーポレートサイドからすれば、リスクはどうなのかという話は、おそらくどの会社でも一定程度あると思います。2023年は10件ぐらいM&Aに取り組んだわけですが、内部統制を含めてガバナンスが効いているのかというのは当然言われてしまうし、上場会社としてしっかりと取り組まなければいけません。

きちんとやらないとM&Aができなくなるので、それぞれの立場でしっかり意見を言い合っています。SHIFTはM&Aに限らず、できない理由を言うよりどうやったらできるのかを考えようという代表のスタンスがあります。その意味では、どうやったらできるのかを一緒に考えていくことが必要だと思っています。

■ M&Aチームのメンバーはどう構成するのがよい?

金坂:それぞれCFOとしてのリーダーシップを取りつつ、GENDAであればCSO、メドレーであればCorporate Development室長、そういう方がしっかりチームで連携して進めていらっしゃるなと思いました。そういう方をどうやって採用していらっしゃいますか。プロフェッショナルファーム出身者などは事業会社だと報酬水準もなかなか合わせるのが難しかったりすることもあると思います。採用について工夫されているところを伺えればと思います。

渡邊:CSOは元々FAS出身で、森・濱田松本法律事務所や西村あさひ法律事務所のM&Aロイヤーであったり、4大(監査法人)の公認会計士であったり、投資銀行のIBDや商業銀行のM&Aファイナンス出身者を採用できています。上場前に入ってくださっているので、株式関連のストックオプションを含めた報酬体系になっているので、年収をかなり下げても入ってくださいます。

小島:我々もその意味ではチームを分けて採用しています。M&A推進室のようなエグゼキューション業務においてはM&Aの経験者を採っています。バリューアップやソーシングもありますが、そこは必ずしも投資銀行出身というよりはコンサルや事業会社、あるいはフットワークが軽いなど、いろいろな場合があります。その他の要素も加味して、必ずしもM&A色が強いというわけではなく、チームとして多様な人がいるというのが一番強いと思っています。バラエティに富んでいるかなと思います。

採用に関しては条件をマーケットに近づけないといけないという意識はあります。評価会議をやっていて、経営陣を含めて丹下とも話をします。

前期の評価会議でも、どのようなインセンティブを作っていったら、より良い人が入ってくるかを議論しました。もちろん既存のメンバーと併せてです。辞められてしまうよりは残ってもらいたいので、色々と設計しているところです。

河原:室長は投資銀行出身ですが、メンバーに関しては全員がM&A経験者というわけではありません。いきなり一人で全部任されるのではなくチームで動きます。コンサル出身者などバラエティーに富んでいると思います。

採用について、当社は上場して約5年経つのですが、直近では株式報酬としてRS(譲渡制限付株式)を使用しておりまして、現金報酬と株式報酬の合計水準を高めていっております。

金坂:ありがとうございます。

■ テーマ4:バリュエーションとシナジー、資金調達戦略

金坂:次はバリュエーションとシナジー、資金調達の考え方です。GENDAの渡邊さんは先ほどシナジーをあまり見ないとおっしゃっていました。少しジェネラルな質問です。小島さんから伺っていきます。

小島:バリュエーションに関してはもちろん会社にもよります。我々もどちらかと言えば、それほどシナジーは織り込まないというのが結論です。そういう意味では、渡邊さんと結構似ています。我々もエントリーバリューを限りなく低くするところに注力しています。とはいえ、IT業界に良い会社が出てくると、どうしても入札にならざるを得ないです。高値は追わないものの、我々の成長に対して欲しいと思うところも一定程度あります。

どこまでシナジーを入れるかはスタンスの話です。もちろん取締役会では、最終的にDCF法でバリュエーションしたものを3つほどフットボールチャートで出します。大体は右肩上がりというよりは、ほぼ横ばいのイメージで、それで出せる範囲という考え方をしています。

資金調達に関しては、今までは銀行からお金を借りていました。それほど大きな案件をやっているわけではないからです。今後は会社としてのステージが変わっていくでしょうから、調達の仕方やファイナンスは考えないといけないと思っています。

金坂:ありがとうございます。

河原:バリュエーションは対象会社の状況によるので一概には言えないです。EBITDA何倍までしか買わない、とにかく安く買うみたいなところはあまり考えていません。シナジー効果はかなり保守的に見積もってやっています。バリュエーションに関しては、会社の成長率や収益性、ビジネスモデル等によって様々です。。投資回収期間については業界や成長率等に関係なく横比較ができるので、そういったところは開示もしつつ重視しています。

資金調達は、当社にとって比較的大きな110億円の案件をTOBで2024年の初めに実施しました。そこはフルデットで実行しました。銀行さんからの条件と連結へのインパクトを考慮し、十分に財務健全性が保たれている範囲で実施しています。

金坂:DEレシオや指標で決めているルールはありますか。

河原:DEレシオはまだ1倍にいったことがないです。ネットではなくて、表のDEレシオです。1倍はある程度目安にしていますけれども、絶対に超えては駄目かというと、そんなこともないという感じです。

金坂:皆さんのバリュエーションの話を聞いていて、かなり規律があるという印象を受けました。あの会社は高くて見送ったけど買っておけばよかったな、みたいなのはあったりしますか。

小島:買えなかった案件は開示されている範囲で全部ウォッチしています。どこがどれくらいの価格で買って、今はどういう経営状況で、減損したのかなどを見ています。再度市場に出てこないかも含めてです。ファンドが持っていたら、必ずまた数年後に出てきます。時期を見ながら、取れなかった先を追っています。毎年30件〜40件の意向表明を出しても、成約は5件〜6件が平均なので半分以上も負けているんですよね。

負けている要因は全部きちんと見ています。大体は価格ですが、それ以外に何か要因があったのではないか。SHIFTの良さは伝えきれていたのか。そういったところは全部整理をして敗因分析を徹底的にしています。

金坂:負けた分析、買えなかった分析というのは面白いですね。渡邊さん、このテーマについてコメントはありますか。

渡邊:シナジーを織り込むかどうかも手段の手段だと思っています。PMIをするという手段に対するシナジーを織り込むかどうかの手段だと思っているので、より劣後するというのがGENDAの中での考え方になっています。DEレシオについては、基本的にセットで今までほとんどの案件をやってきました。エクイティについては直近で公募増資をして100億円を取りました。あとは株式交換、株式交付でのM&Aを活用しています。これもある意味でエクイティを入れたかたちでのM&Aかなと思っています。こういう時はPERを重視しています。

あとは今後の社債や、あるいはメザニンなど、多くの資金調達手段を考えております。ある程度は金利が高くなくても、そもそもフリーキャッシュフローのイールドが相当高いものを買っています。1%で借りて20%で回すのか、3%で借りて20%で回すのか、みたいな差になってくるとしたら、それはどんどん深いところを資金調達していいはずであるというかたちで今いろいろ研究中です。

金坂:株式交換の話がありました。キャッシュでM&Aをしない場合、どうやって株式交換で対応しているのでしょうか。

渡邊:基本的に経営者が若いケースです。事業承継の場合にはキャッシュニーズがあるわけですが、若い経営者さんの場合はそこまででもないです。むしろGENDAの成長性にベットできます。ジョインした後にGENDAの株式がインセンティブになるわけです。

例えば直近で言うと、シトラムというウクライナのお酒の会社をEBITDAマルチプルの1.8倍で買えたのも、GENDAの株式の成長性をかなり見込んでくださったということです。実際それは当時1,600円で渡しています。今日の終値は2,400円ぐらいですが、既にかなり上昇しています。更に、その会社自体をグループイン後に伸ばしただけでなく、GENDAがいろんなものを買ってくることにフリーライドできるなど、メリットが多くあります。

金坂:今のようなケースだと、GENDAグループの中で新しいミッションを持たれたりするのでしょうか。

渡邊:今のケースは同じ会社をやってくださっている感じです。

■ テーマ5:成功事例と失敗事例からの学び、組織力の課題と補完

金坂:5番目にいきたいと思います。特に失敗を皆さんも聞きたいと思います。過去の成功や失敗事例からの学びはありますか。これはやるべきだと押し切ってやって、そこからどうリカバーしたのか。お話いただけるケースはありますか。河原さんからお願いします。

河原:明確な失敗事例というのはありませんが、先ほど申し上げたPMIについては課題だと思っております。

金坂:小島さんはいかがでしょうか。

小島:何を失敗というかにもよりますが、我々も何十年もやっているわけではないので、M&Aの効果が1、2年では分からないです。本業とそれ以外の話をしましたが、パフォーマンスはやはり短期間でも違います。

我々のグループ会社の平均成長率は過去2期で大体130%ぐらいです。その中にも凸凹がありました。

■ マイノリティ出資の難しさ

小島:あと、これは少しずれますが、我々は基本的には100%株式取得を目指しています。マイノリティも一部ありますが、いろいろやる中で、基本的にマイノリティは積極的にはおこなわないという結論になっています。100%持っている会社ですらコントロールすることが難しいので、たったの数%で何ができるのか、といった課題があります。

マイノリティ出資も上場・非上場に分けて検討しています。上場していれば売ろうと思えば売れますが、非上場だと売ることもなかなか難しいので、そこは整理をします。失敗とまでは言わないですが、我々にとってマジョリティでやるほうが伸ばせるというところは学びでした。最近はあまり積極的ではなく、マイノリティ出資はやっていません。

金坂:おそらくずっとマイノリティでいくためのマイノリティ出資というよりは、将来マジョリティに持っていくためのファーストステップとしてのマイノリティでいらっしゃったんじゃないかと思います。マイノリティで入っても、事業がうまくいってIPOを目指せる、順調だとマジョリティの提案が取ってもらえないなど、そういうところもあるんですか。

小島:ケースバイケースです。マイノリティの場合、我々は事業会社なのでリターンはそれに見合ったビジネスが取れるかどうかというところです。10億円投資したら10億円分のビジネスがもらえるか。ざっくりですがそういう考え方が根底にあります。元から100%を取れないことが分かっているケースもあります。あとは、社外取として人を派遣しているわけでもないので、状況がタイムリーに把握しきれないということもあります。こうした観点からSHIFTとしてやるのはまだ難しいのかなというところです。

金坂:渡邊さん、このテーマでお話いただけることがあればお願いします。

渡邊:成功と失敗の定義を明確にしています。出した金額をより多くのキャッシュを回収できるかどうかで成功・失敗を考えています。その観点で言うと失敗は今のところ、幸いなことにありません。基本的に対象会社の成長は大事ではありますが、先ほどの点を成功か失敗の判断軸にしています。成長とは何かと言われたら、M&Aで出したキャッシュフローがどれくらい大きくなって返ってくるかどうか、だと考えています。

■ テーマ6:投資家とのコミュニケーション

金坂:6番目の質問です。M&Aをすると、投資家からいろいろと聞かれて継続ウォッチもされるでしょう。M&Aに関する投資家とのコミュニケーションでどのような配慮をされていますか。どのようなことに気をつけていますか。もし仮に、何か過去にフィードバックや、あるいは他の理由でIR上、M&Aの戦略の見せ方や方向性を変えたことがあればお話しいただけますか。

渡邊:最終的にこれを買った、と言うだけではなく、その時の裏側にある検討プロセスを可能な範囲で説明しています。こちらも一生懸命考えて、絶対に良いと思ってやっています。AとBとCという選択肢があってAを取ったということだけを出すと、Aに関する悪いところの批判が来たりしますし、それは真っ当な批判になります。そうではなく、AとBとCという選択肢からどれかを決めないといけない立場からして、プロコンをネットして一番良いAを取りました、というのを説明したりしてから、投資家の納得感を得られるようになり、円滑なコミュニケーションができるようになったと思っています。

2つ目の戦略の方向性を変えたのは、PMIの成果を前面に出すようになったことです。これは繰り返しですが、究極的には手段だと思ってはいるものの、少しでも上がると非常に株価が反応しやすいというところは若干のバグというか、投資判断の実態と乖離しているところかなと思います。そこは良い方向に使わせていただくということで、PMIがうまくいっていることは積極的に開示するようになりました。

金坂:AとBとCみたいなお話というのは、価格的なことなのか、ターゲット的なことなのか、もう少しイメージをいただけますか。

渡邊:おっしゃる通り、価格とターゲットです。それから、のれん償却費があります。のれん償却費が判断軸として関係ないところを何度も繰り返し説明しています。例えば、投資家に架空の企業を買収した際のキャッシュフローのExcelのモデルをお渡ししたりします。本当の会社ではなく疑似的な会社を渡しています。のれんの数字をどんなに変えても結局、IRRは全く変わらない、出した金額がいくらで返ってきたのかも全く変わらないのを、投資家自身で見ていただきます。あくまでキャッシュフローであることを開示して、常にコミュニケーションを試みています。

金坂:河原さん、お願いします。

河原:我々はあまり飛び地はやらないです。医療ヘルスケア業界の主にIT・インターネット領域で実施します。その範囲内であれば、なぜこの会社を買ったのか、みたいなことは過去にあまりなかったです。

気をつけていることは、買収時の説明資料を出し続けることはやっていて、案件ごとにしっかりとFAQを含めて説明しております。今のところ変えたのは、PMIの事例の開示をし始めた点です。

金坂:M&Aによって成長率が上積みされる部分もあると思います。M&Aがあったら・なかったら、という部分は分けて出しているのでしょうか。

河原:我々はしていないですね。皆さんは内訳は開示されますか。

小島:決算発表では、FY25の売上高は1,300億円と出しています。そこにアップサイドでM&Aの確変としてプラス100億と公表しています。これまでM&Aは不確実性があるので予算には入れていませんでした。

金坂:1,100億円から1,300億円はM&Aは織り込まない目標ですか?

小島:既にリリースをした案件分は織り込んでいますが、それ以外は1,300億円には織り込んでいません。

渡邊:GENDAも今はM&Aによる上積みは入れていないですね。入れて、コミットして、変なものを買うというのがよくあるM&Aの失敗例だと思います。

■ テーマ7:最後に

金坂:7番目も深い質問です。3つ、もしかしたら2つかもしれないです。本当に突き詰めると1つかもしれないです。今日のセッションのまとめも含めて、特に意識しているポイントや、聞いている方に伝えたいポイントを伺っていきたいと思います。

渡邊:徹底的にとにかくキャッシュフローに注目しています。企業価値を考える時にはコーポレートファイナンスの理論が存在しているので、そこに忠実にしています。

出したキャッシュフローより多くのキャッシュフローを回収できるかどうか、です。そこについては、相手のEBITDAマルチプルを見ながら、つまり出した金額を何年で回収するんだというのが、なんとなくEBITDAマルチプルにつまってくるわけです。わかりやすく言えば、4倍だったら4年回収っぽい感じになってきます。実際は、そこからキャペックスと税金を払います。フリーキャッシュフローへの橋渡しがあるので、フリーキャッシュフローでのマルチプルはすごく見ています。

その時にはキャペックスの前提が重要になってきます。キャペックスは基本、成長率をゼロにするメンテナンスキャペックスのみを織り込んだ時に、それで回収にどのくらいかかるのか、というのをまず見ます。

例えばEBITDAの3倍で買って、それがフリーキャッシュフローで5倍だったら、フリーキャッシュフローの20%の利回りの投資商品を買っているという考え方にしています。それを1%で調達すれば19%の利ざやが取れます。19%も、9割ぐらいをデットにしたケース、ちなみに基本は100%のフルデットなわけですが、エクイティを少しだけにすると、何もしないでIRRが30%ぐらいになってきます。そこに30%〜40%EBITDAが成長すると、IRRが100%を超えてきます。

金坂:後ろになればなるほど、ハードルが上がってきて申し訳ないです(笑)。河原さんお願いします。

河原:バリュエーションは当然とても大事です。また、鶏と卵かもしれませんが、トラックレコードも重要だと思っています。本日登壇されている会社さんもM&Aをよくする会社だと思われて、実際に成功されて今のポジションがあると思います。そこを積み重ねながら、大きな失敗をせずに続けていく。これを5年10年20年と続けていくと、どんどん案件が来るようになってくると思います。当社もM&Aをし始めた頃に比べるとかなり案件が来るようになっているので、大きな失敗をせずに積み重ねていくところは重要だと思いました。

あとは、シンプルかもしれないですが、事業側とコーポレート側の連携は、言うが易しで、やり方やバリュエーションの話を事業側とも共有認識をもつなど、そういうところも含めて工夫次第だと思っています。

金坂:最後の締めということで、小島さんお願いします。

小島:3点お伝えします。

1つ目は、これはSHIFTも皆さんもそうなのかもしれないですが、代表を含め、経営メンバーがしっかりとM&Aとは何かを腹落ちして理解していることが大事だと思っています。M&Aは最終的な手段なので、M&Aありきではないですが、M&Aを使って何ができるのかを代表を含め、相当の時間を費やして議論しています。どうやったらもっと買えるのか、もっとソーシングできるのか、もっと違うやり方はないのかということをひたすら考えています。

なぜ負けたのか、勝った人と何が違ったのかを徹底的に議論しています。そこから気づきがあったり、こんなことをやってみようかとなったりします。SHIFTグロース・キャピタルというビークルを作ったのもそうです。まずM&Aが単に買ったり売ったりするだけではなくて、どのような可能性があるのかも含め分析をします。M&Aは何か、ということを全員が考えているところはあると思います。

2つ目は、M&Aに限らず、我々は再現性を大事にしています。たまたま今年はできたということでは駄目で、去年できたことを今年はもっとできるようになっているということに力を入れています。私もここ1年ぐらい、海外の投資家を中心に話をすることが増えました。M&Aをずっとやってきているので再現性が高いということは一定の評価をされています。

最後は、現場でやらなければいけないということです。M&Aはやはり簡単にできる話ではありません。利害関係者もいます。会社の売り買いなのですぐにできる話ではないです。期間も決まっている中で、どうやっていろいろな関係者に納得してもらうかが大事だと思っています。禍根を残さないようにするためのプロジェクトマネジメント力が特に求められます。会社としてやるというところを、現場もきちんと理解してやりきることが大事です。それができると、M&Aを良い意味でいろんな使い方をしながら成長につなげていけると思っています。

金坂:僕自身もとても勉強になりました。すばらしいセッションになったのではないでしょうか。皆様ありがとうございました!