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[事例] 「日経電子版、日経ヴェリタス等への掲載を実現した広報」「個人投資家1.5万人調査を通じた個人投資家IR」「モダリティの特徴整理を通じた機関投資家IR」の支援

株式会社カイオム・バイオサイエンス

株式会社カイオム・バイオサイエンス

市場:東証グロース(4583)
業種:医薬品
事業概要:独自技術のADLib®システムやTribodyTM等の抗体作製技術を駆使して、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品創出に取り組むバイオベンチャー

当社グロース・キャピタルは、上場ベンチャーの株式での「資金調達」や「戦略的IR」を支援しています。
今回の記事でご紹介するのは、グロース・キャピタルが約2年間にわたって支援してきた抗体医薬の研究開発を手掛けるバイオベンチャー、株式会社カイオム・バイオサイエンスの事例。資金調達とセットでこれまでご支援してきたグロースアクション(成長支援)について、カイオム・バイオサイエンスの取締役経営企画室長の美女平在彦氏と共に、グロース・キャピタル代表の嶺井政人が振り返りました。

グロースアクション概要

グロースアクション概要

上場バイオベンチャーの成長に不可欠な個人投資家との向き合い方

嶺井:本日はどうぞよろしくお願いいたします。今回は資金調達とセットでこれまでご支援してきたグロースアクション(成長支援)をテーマに進行したいと思います。まずは当社の個人投資家向けIR支援についてお話を聞かせてください。最初に、御社における個人投資家向けIRの位置づけや個人投資家向けIRにおいて、どのような点に課題感をお持ちだったかについて、お聞かせください。

美女平:当社は研究開発型企業として開発資金の確保に向けて、株式を活用したファイナンスも含めた選択肢を常に持ちたいと考えています。そのためには適切な株価・流動性を形成することが必要になりますが、当社の現在の時価総額ですと個人投資家が当社の株価や流動性を形成するメインの投資家となります。そのため、個人投資家とのコミュニケーションはこれまでも重視しており、丁寧にIRに取り組んできました。但し、当社のような創薬ビジネスは個人投資家にとって、なかなか理解が難しいビジネスでもあり、当社の魅力をどのように伝えるべきかについての課題感を持っていました。

カイオム事例03

【プロフィール】 美女平在彦(びじょひら・ありひこ)

株式会社カイオム・バイオサイエンス取締役経営企画室長。大学在学中に産業育成研究所に入所。主に製造業の経営コンサルティング活動に従事した後、ファイザー株式会社の医薬部門、大鵬薬品株式会社の経理・海外事業部門と製薬会社で営業・事業計画立案・FP&A等の多岐に渡る業務を担当。2013年にカイオム・バイオサイエンスへ参画。2017年より取締役に就任し、経営企画室長となる。

嶺井:そのような課題感をお持ちの中で、個人投資家向けIRの取り組みで最初に取り組んだのは、1万5020人を対象にした意識調査でした。一般的には、バイオベンチャーに興味を持っている投資家は「ボラティリティが高い」点に注目していると考えられがちです。しかし、調査をする中で、実は、各バイオベンチャーが向き合っている疾患や創薬技術に興味を持って投資している人数が多いという事実であったり、バイオベンチャーに投資したことがある投資家や、複数回投資したことがある投資家が一定の割合でいらっしゃる等、新しい発見がありました。

美女平:調査結果を見て感じたのは、これまでも株主の方の声を聞いて資料をつくってきたつもりでしたが、実際のところは投資家や株主の方の実像をしっかりと捉えきれていなかったということでした。また、投資家全体の3.9%を占めるコアなファン(バイオファン)の方に対しては丁寧に対応できていた反面、その他の潜在的な投資家層には十分にリーチできていなかったことも見えてきました。

バイオベンチャー投資家の分類
個人投資家 15,020名対象、バイオベンチャーへの投資意識調査

嶺井:その原因はどこにあったのでしょうか。

美女平:端的に言えば、サイエンス面で細かく情報を出しすぎていたと感じています。たとえば、抗がん剤についての技術的な話は普段耳にしない難解な言葉が使われるなど、潜在的な投資家層にはハードルが高いため、もっと平易な内容で技術の有用性や収益を生み出す仕組みをお伝えするべきでした。

嶺井:調査結果を踏まえて、あれもこれも伝えるのではなく、ポイントをグッと絞ったうえで、弊社主催の1000人規模の個人投資家IRイベントに登壇されました。イベント後に投資家のポジティブなフィードバックが多数寄せられましたが、手応えはありましたか。

美女平:参加者の方から「内容がわかりやすかった」、「投資したくなった」といったフィードバックをいただけたのはうれしかったですね。また、イベントに同時に登壇された企業と比較すると当社の時価総額は小さかったのですが、それでも当社に注目していただけた個人投資家が多数いることがわかり、自信にもつながりました。グロース・キャピタルとのイベントの振り返り会では、参加者の購入率など目から鱗が落ちるような詳細なフィードバックが多かったのも印象に残っています。

嶺井:調査結果やIRイベントでのプレゼンを通して私が感じたことの1つは、ボラティリティや出来高を生み出しているメインの投資家はバイオファンではなく、短期的に売買する投資家だということです。一方のバイオファンは、いわば岩盤層であり、日々の出来高に大きく寄与するわけではありませんが、株価が大きく崩れるのを防いでくれたり、中長期的な株価向上の後押しをしてくれる存在と言えるのではないでしょうか。

美女平:そうですね。我々のような上場バイオベンチャーが継続的に資金調達を実現するためには、流動性をつくってくれる投資家も、バイオファンもどちらも大切であり、いわば車の両輪なのだと思います。

複数メディアの記事掲載によるメディア露出を実現したPR支援

嶺井:こちらの意識調査は個人投資家向けIRへの活用に留まらず、「個人投資家」「潜在的なアライアンス先・採用候補者」に対して御社の事業・技術の認知の獲得・拡大を目指して、PR会社との連携のもと連名で、この意識調査に関するリリースを出させていただきました。その結果、『日経ヴェリタス』をはじめとして、複数のメディアに取り上げられましたが、反響はいかがでしたか。

美女平:上場バイオベンチャーが発信する情報のあり方への問題意識が強かったため、一番うれしかったのは、バイオベンチャーの経営やIRをされている方々が記事をご覧になって、「自社のIRの参考にさせてもらったよ」とお声がけいただいたことですね。あとは、研究員が記事に取り上げられたことで、彼らのモチベーションアップにもつながりました。私たちのような情報の非対称性が大きいビジネスにおいては、投資家の方々の期待値のコントロールは容易ではありませんが、投資意識調査をしたことで、業界や社員にポジティブな影響を与えることができ、時間と手間をかけた甲斐がありました。こうしたPR支援を受けることができ、とてもありがたかったです。

嶺井:私も、大手証券会社が、私たちの調査結果を引用して、バイオベンチャーを回っているとお聞きしたときはうれしかったです。

美女平:日本のバイオベンチャーは成功事例が少ないと言われる中、こうした調査結果が広く普及すれば、成長産業であることがしっかりと認識され、バイオセクター自体の健全な投資環境をつくっていくことにもつながるのではないでしょうか。そして、それが結果的にバイオセクターを盛り上げることへの少しでも助けになるのであれば、私としては一番うれしいことですね。

カイオム事例04

外部のパートナーの支援による、機関投資家を意識したモダリティやフォーマットの特徴整理

嶺井:個人投資家への取り組みと合わせて、機関投資家に対して、御社のモダリティである「抗体医薬」をどのように伝えていくかについても一緒に議論させていただきました。具体的には、ヘルスケア領域に強い外資系の戦略コンサル、アーサー・ディ・リトルに弊社のパートナーとして入ってもらい弊社負担で、さまざまなモダリティが登場する中での抗体医薬の位置付け、市場規模、成長性の整理、抗体医薬における各フォーマットの特徴の整理等を行いました。なぜ、そのような整理が必要だったのでしょうか。

美女平:抗体医薬は2000年頃から承認され始めたモダリティで、医薬品としての実績が確立しています。最近IPOされる企業は再生医療や遺伝子治療等、新しいモダリティを用いたバイオベンチャーが増えているのですが、一般的な機関投資家にとっては馴染みの薄い分野もあり、市場規模や成長性がどのくらいあるのかについて、体系的にまとまったレポートはあまりありません。であるならば、外部の視点で客観的なデータをまとめていただいたほうが投資家の理解も進むと考えました。

嶺井:たしかに、日本のバイオベンチャーと機関投資家が向き合うのは、IPOのロードショーくらいしか機会がなかなかなく、そうした場においては、mRNA、再生医療、遺伝子治療等、新しいモダリティについてのプレゼンを目にすることのほうが多い印象があります。その際に「抗体医薬と比較してこういった優位性があるんです」とプレゼンされる結果、機関投資家が抗体医薬を過去のモダリティとして、ポテンシャルを過少評価してしまうおそれもあるかと思います。

美女平:遺伝子治療や細胞治療など新しいモダリティに比べて、抗体医薬が優れているとか、劣っているという話ではなく、それぞれ得意不得意があるというのが実際のところです。ただ、嶺井さんがおっしゃるように、そのあたりについての情報を適切に提供する必要があります。その役割を担ってくれたのが、アーサー・ディ・リトルのレポートだったのです。

世界の医薬品市場 モダリティ別の市場規模とCAGR
2024.3.25 開示 事業計画及び成長可能性に関する事項 P7

嶺井:こういった客観的なデータを自社でまとめるのはやはり難しいのでしょうか。

美女平:3つ課題があると思っています。1つ目は、自社の研究分野について自社でレポートをまとめて発表するのと、外部の視点で発表するのとでは、客観性や重みづけが変わってくる点です。2つ目は、医薬品が承認間際の状況であれば、市場規模についてある程度の蓋然性をもって語れますが、私たちのように研究開発の上流工程を担っている企業の場合、開発初期段階ステージの医薬品が、最終的にどのくらい収益になるのか、その結果どのくらい会社が伸びていくのかを語るのは容易ではありません。また、会社の伸びと市場の伸びが完全に一致するわけではありませんので、投資家をミスリードしてしまうリスクもあります。3つ目は、工数の問題です。バイオベンチャーの場合、競合分析等を担当する人材が必ずしも社内にいるとは限りません。片手間にやろうとすると、時間がかかるだけでなく、鮮度も下がってしまいます。
以上のような課題がある中、グロース・キャピタルに支援いただき、アーサー・ディ・リトルからプロフェッショナルなサービスを受けることができたのは幸運でした。

嶺井:アーサー・ディ・リトルとしても上場バイオベンチャーを重視されており、御社と結びつけることができたことを、私たちとしてもうれしく思っています。

資金調達支援に留まらないグロース・キャピタルの幅広い成長支援

嶺井:これまでご一緒する中で感じられたグロース・キャピタルのサービスの特徴があれば教えてください。

美女平:なんと言っても、資金調達に留まらず、IRやPRなど幅広い領域で成長支援を受けられるのがグロース・キャピタルの特徴だと感じています。当社のような上場バイオベンチャーは資金調達以外にも、成長に向けた様々な経営課題に日々直面しているのですが、そうした課題と真摯に向きあってくれる心強いパートナーだと思います。

嶺井:ありがとうございます。最後に、資金調達や個人投資家向けIR等に課題感を持っている上場バイオベンチャーのみなさんにメッセージをお願いします。

美女平:バイオベンチャーだけでなく、ベンチャーのリソースは限られていますので、グロース・キャピタルのように優れたナレッジを持っているパートナーと一緒に資金調達や成長戦略を推進することで、より効果的な取り組みに繋がるのではないかと思います。嶺井さん、これからもよろしくお願いします。

嶺井:こちらこそよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

美女平:ありがとうございました。

(了)